泣いてもいいけど、泣かないでね。

  • 2009/09/05(土) 08:13:33

9・5
恭子ちゃんからメールがあった。
「綿谷歯医者さんが、来てくださって、かっこちゃんに病院に来てほしいって言ってたけど、今日は無理と言ったよ。5時過ぎに電話してほしいって」
恭子ちゃんに電話をしたら「お兄ちゃん、今日も調子が悪くて、首を何度も振って苦しそうだった。だから、かっこちゃんにいてほしいと思うから、無理って言ったよ。明日もあさっても、会えないから。目のカバーを作ったけど、マウスピースはまたかっこちゃんに一緒に来て作ってほしいって。急がなくていいよ。マウスピース、かっこちゃんが作ったので足りているもの」
本当に綿谷先生はいい方。ね、宮ぷー。もう何度目だろう。何度も何度も作り直してくださって、目のカバーだって、歯医者さんなのに、作ってくださる。今のだって、作ってくださったおかげで、誰がカバーの上にラップをしても、目の動きをさまたげないようにラップができるようになったよ。
綿谷歯医者さんに電話すると、受付の方が私の名前を言うだけで「先生、かっこさんですよ」とつないでくださるのです。
「かっこさん、こんにちは」と先生の優しい声。
「先生、、ありがとうございます。先生は本当になんてなんていい方なのでしょう」
急に電話でそんなふうに言うのはおかしいかもしれないけど、でも、本当に本当にそうだもの。何度も病院に足を運んでくださる。何度も繰り返し作ってくださる。本当にすごく大変なことだ。お気持ちがないと決してできない。ねえ、宮ぷー、すごいことだよ。
私は宮ぷーが調子が悪いと聞いて、いてもたってもいられなくなって、また一時間年休をいただいて、病院へ急いだよ。

病室をあけると、先生の声がした。
入っていくと先生が
「宮田さん、心細いのか泣けるんです」と頭の下に敷いたタオルで、そっと目をぬぐってくださってた。
私の顔を見たとたん、顔の様子を崩すようにして、宮ぷーがまた泣いたよ。

脳幹出血をされた方々が教えてくださったことを思い出した。
発病して、4ヶ月から6ヶ月くらいの頃に、心がつらくなって、泣けて泣けて仕方がないことがあるとおっしゃっていた。そして、それは回復のきざしだともおっしゃっておられた。その時期が来たのだろうか。

「カレンダーを見て、かっこさんが明日とあさってと広島だとばらしてしまったら、また大お泣きして」
それを聞いただけで、宮ぷーがまた気持ちを抑えられないようにして涙をこぼした。
「だいじょうぶだよ。いつか、病院にお泊りするね」
宮ぷーは昨日はうれしそうに目を大きくあけてくれたのに、今日は首を振っていた。
「妹さんが、つらいなら明日は9時に来るからと言っても、首を振って。たぶん無理するなって宮田さん言いたいのかな。今日も5時までおられたんですよ。昨日は調子がよくて首を振って、“腹減った。カレーが食べたい”って教えてくれたのに、今日はそれもできないって言って。でも、そう言いながら、ちゃんと首を振って、返事をしてくれているんです。先生のときは、首を立てに振ってうなづいていました」
「うなづいて?」
「そうなんです。頭を下げるというより、上げて下げるという感じで」
宮ぷーが、それを聞いて、頭を動かした。「わあ、本当だ。じょうずじょうず」
「先生、脳幹出血をされた方が、みんなこの時期に泣けるのだと教えてくれました。そしてそれを越えて、それから笑えるようになるって。よくなっている証拠ですよね」
「そうです、そうです。よくなっている証拠。すごいことです」
私は、少し話を変えて、先生にお願いをしたよ。
「先生、お願いがあるのです。リハビリが終わるまでに、一日、こんなリハビリをしたらいいよというメニューみたいなものを作っていただけたらなあと思うのです。表にして、お昼に恭子ちゃんができたら、○をつけてもらって、できない分を私が夜して、夜もできなかったら、次の日にそれからするというように、していきたいなあと思うのです」
そのときに、先生がすごく驚くことを言ってくださった。
「車椅子ができるまですごく時間がかかるんです。半年くらい。期待をもたせて、だめだったら申し訳ないのだけど、その半年くらいまではリハビリが続けられるのじゃないかと思っているんです」
「わあ、うれしい。そうだったらどんなにいいでしょう。宮ぷーは先生大好きなんです。車椅子、なかなかできないといいな」
「本当に、あの、わからないのですけどね」

ああ、そうだったらいいなあ。そうだったらいいな。一日でも長く、先生とつながっていられたら、宮ぷーも私たちも本当にどんなに幸せだろうね。
つながっていられなかったとしても、こんなに温かな先生と出会えたことは、本当になんてうれしくて、幸せなことだろうね。

先生が言ってしまわれて、私の顔をじっと見て、宮ぷーはまた泣いた。どうしたの?痛いの?つらいの? 何を聞いても首を振る。すごくしっかりと首を振ってる。
「倒れたことが悲しいの?」
宮ぷーは目を大きくあけて「そうだ」と返事をしたの。
私は宮ぷーのベッドに腰かけて、宮ぷーの頭を抱いて言ったよ。
「ね、聞いてね、宮ぷー。倒れたことは本当につらいこと。ものすごくつらいこと。でも、宮ぷーは決して一人じゃない。宮ぷー?泣いていたら、何か変わる?悲しんでいたら何か変わる?」宮ぷーは私の目をじっと見て、首を振ってくれた。
「そうだよ。泣いていても、悲しんでいても、病気が消えるわけじゃないよ。倒れたことが変わるわけじゃない。ね。宮ぷー、でもね、感謝したり、喜んだり、うれしいことを数えることで、いっぱい変わっていけるんだよ」
宮ぷーはじっと話を聞いてくれていた。でも、「宮ぷーはなおるよ」と言うと、また首を何度も振って大きく泣いてしまう。
「宮ぷー、宮ぷーはね、三時間で死ぬって言われたよ。三日間で死ぬって言われた。出血の写真を見られて、先生が、きっとこの出血なら、こんなふうな経過をたどるだろうと思われたのだと思う。でも、私はそのたびに“だいじょうぶです”って言ったんだよ。だって宮ぷーだもの。絶対にだいじょうぶ。意識は一生もどりません。植物状態ですと言われたときも、だいじょうぶですって言った。出血の写真を見て、その状態の方がもし10万人いて、みんな戻らなくても、宮ぷーはだいじょうぶ。だってね、宮ぷーだから。体はどこも動きませんって言われたときも、だいじょうぶですって言ったよ。そしてね、ほら、動いてる。おしっこの管が一生とれませんって言われてもだいじょうぶですって言ったよ。うそじゃない。誰がなんと言っても、それから十万人の人がそうでも、百万人の人がそうでも、宮ぷーは宮ぷー。だから、だいじょうぶ。宮ぷーは、お医者さんを信じるの?統計を信じるの?それともかっこを信じるの?」
宮ぷーは首をもう振らなかった。私の話に何度も目をぎゅっとつぶってくれたよ。
宮ぷーの体を抱きしめながら、何度も言ったよ。「宮ぷーはだいじょうぶだよ。かっこがいるよ。かっこがそばにいるんだよ。宮ぷー。私たちのそばには、神様がいてくださる。神様は私たちが望むとおりにしてくださったよ。私は宮ぷーに最初、生きて生きて!って祈って。神様はそうしてくださったよ。意識をとりもどしてって祈った。そしてちゃんとそうしてくださったよ。宮ぷー、味見ができますようにと祈ったら、そうしてくださった。おしっこの管がとれますようにと祈ったらそうしてくださった。神様はかっこが望んだことは全部かなえてくださったよ。宮ぷーも、神様は望んだようにしてくださる。信じなくちゃだめだよ。そしてね。私たちにはたくさんの人たちがついているよ。毎日のように祈ってくださってるよ。宮ぷー、今、宮ぷーの体に起きていることは全部、奇跡。今日だって、こんなふうに宮ぷーが、イヤイヤしてくれて、目をつぶって返事をしてくれて、私たちは気持ちを通わせている。これも、神様に私は何度も祈ったよ。赤塚さんが今も毎朝、海に入って宮ぷーのこと祈ってくださってる。ね、モロッコでも、気持ちを通わせられますようにってずっと神様にお願いしてきたよ。ね、宮ぷー、信じようね」

宮ぷー、そのとき「こんにちは」って入ってきてくださったのは、大好きな看護婦さんだったよ。私は飛びつきたいほどうれしかった。宮ぷーもそうだったんだね。宮ぷーはものすごく安心した顔をしたもの。
看護婦さんはすぐに宮ぷーに声をかけてくださった。「だいじょうぶ。看護婦さんもすぐに慣れて下さるから。ちゃんとかつこさんがお話してくれて、私もよくお願いしておくね」
看護婦さんの手は温かい。宮ぷーは髪をなぜてもらってうれしそうだった。私もうれしかった。
ね、宮ぷー。うれしいことを数えよう。うれしいことはいっぱいあるよ。
こんなに大好きな看護婦さんと出会えた。そして、今日は来てくださったよ。先生にも出会えた。明日、出勤日だから、もし4階の急性期の患者さんがたくさんおらえなかったら来ますって言ってくださったね。顔だけでものぞかせますって言ってくださったね。宮ぷー、なんてうれしいんだろう。
今日は熱もさがったよ。うれしいね。おしっこも出てる、うれしい。
いいことがいっぱい。私たちは、幸せなんだよ。

宮ぷー、どんどんよくなろうね。
宮ぷーと同じような出血の方がおられたら、今度からはお医者さんは「意識はもどりません。体も動きません」とはもうおっしゃらないよ、きっと。「あきらめないでください。事態はとても深刻だけど、もっと大変な出血で、でも、家族が決してあきらめないで、本人も決してあきらめないで、話しかけ、さすり続けて、意識をとりもどし、そのあとは、本人がものすごくがんばって、こんなによくなった人を僕は知っていますよ」っておっしゃるんじゃないかな? そうしたら、たくさんの人が絶望しないでいられるよ。宮ぷーはだから、もっともっとよくならなくちゃいけないよ。

宮ぷーは泣いていたけれど、家に帰る途中、私は本当に幸せだなあと思ったよ。
だってね、宮ぷー、宮ぷーは、今まで、悲しいときもつらいときも、うれしいときも、私の顔をじーっとみつめるばかりだった。
でも、今は違うよ。こうして、泣いてくれる。顔をイヤイヤとこんなに上手に振ってくれる。大きく目をあけたり、うなづいたりして、気持ちを伝えてくれる。
宮ぷー、今度は笑ってね。湧き上がるように泣いてしまうように、湧き上がるように笑ってほしいよ。
きっときっとそうなるよ。
神様は私たちが望んだように、望んだようにかなえてくださる。

そうだ、バラさんと一緒にお祈りしてたとき、確か徳島だったと思う。そのときに、頭の中に言葉が鳴り響いたんだった。私はそのときのことをこんなふうに日記に書いているよ。

・・・
バラさんの手の平が、紙の上に書かれた宮ぷーの名前の上にかざされているのを見たときに、涙がボロボロとこぼれて、身体の中に言葉が広がったの。こんなことってあるのかな?「あなたの大切な人に伝えなさい。私はあなたとともにいつもいます。治りたいと思うように治しますとそう伝えなさい」神さまの声をはっきりと聞いたわけじゃないと思うの。だって低い声だったとか,優しい声だったとかそんなふうに思ったのじゃなくて、涙で胸がいっぱいになって、あふれてきて、その言葉がわあっと広がったの。
私はすぐに、わかったよって思った。宮ぷーわかったよ。わかっちゃったよ。宮ぷーは治りたいように治る。宮ぷーが手を動かしたいと思えば、動くし、目を動かしたいと念じればそのとおりになるし、口を開けたいと思えば口が開くようになるって神さまが言っているんだよね。
・・・・
治りたいと思うように治すって、イエスさまがそう言ってくださったんだよ。
そしてそうなっているよ。宮ぷーも信じようね、信じて、治りたいと思ってね。泣いてもいいけど、泣かないでね。

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こんにちは

こんにちは‼初めまして・・・ではないですね。宮ぷーさんの動画、いつもみています。これを見たのは始めてですが、何だかとっても胸が痛くなって来ました。カッコちゃんは、すごいな
。カッコちゃんがいるだけで、みんなしあわせそう。私、2010年に「カッコちゃんと素敵な仲間達」という劇をしました。カッコちゃんが送ってくれたCDいつも聞いています。心が温かくなります。私、カッコちゃんも、カッコちゃんの仲間達も、みんなみんな、大好きです(^^)

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